温泉法(全文)

昭和二十三年七月十日法律第百二十五号 最終改正 平成五年十一月十二日法律第八十九号

第一章 総則 

第一条 [この法律の目的]

 この法律は、温泉を保護しその利用の適正を図り、公共の福祉の増進に寄与することをもって目的とする。

第二条 [定義]

 この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水、及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。

 2 この法律で「温泉源」とは、未だ採取されない温泉をいう。


第二章 温泉の保護 

第三条 [土地掘さく許可] 

 温泉をゆう出させる目的で土地を掘さくしようとする者は、総理府令の定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。

 2 前項の許可を受けようとする者は、掘さくに必要な土地を掘さくのために使用する権利を有する者でなければならない。

 3 都道府県知事は、温泉を工業用に利用する目的で第一項の申請をした者に対して許可を与えるときは、あらかじめ通商産業局長に協議しなければならない。

第四条 [許可・不許可の基準] 

 都道府県知事は、温泉のゆう出量、温度若しくは成分に影響を及ぼし、その他公益を害する虞があると認めるときの外は、前条第一項の許可を与えなければならない。不許可の処分は、理由を附した書面をもってこれを行わなければならない。

第五条 【許可の取消し】

 第三条第一項の許可を受けた者が、許可の日から一年以内に工事に着手せず、又は着手後一年以上その工事を中止したときは、都道府県知事は、その許可を取り消すことができる。但し、已むを得ない事由がある場合はこの限りでない。

第六条 【許可の取消し・公益上必要な措置命令】

 都道府県知事は、第三条第一項の許可を与えた後第四条に規定する事由があると認めるときは、その許可を取り消し、又はその許可を受けた者に対して、公益上必要な措置を命ずることができる。

第七条 【原状回復命令】

 第三条第一項の許可が取り消されたとき、又は許可を受けて掘さくした場所に温泉がゆう出しないときは、都道府県知事は、その許可を受けた者に対して原状回復を命ずることができる。同項の許可を受けないで土地を掘さくしたものに対しても、また同様とする。

第八条 【動力装置の許可等】

 温泉のゆう出路を増掘し、又は温泉のゆう出量を増加させるために動力を装置しようとする者は、総理府令の定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。
2 前四条の規定は、前項の増掘又は動力の装置について、これを準用する。

第九条 【温泉採取制限命令】

 都道府県知事は、温泉源保護のため必要があると認めるときは、温泉源より温泉を採取する者に対して、温泉の採取の制限を命ずることができる。
2 都道府県知事は、工業用に利用する目的で温泉を採取する者に対して、前項の命令をするときは、あらかじめ通商産業局長に協議しなければならない。

第十条 【環境庁長官の承認】

 都道府県知事が、第三条第一項又は第八条第一項の規定による処分をする場合において隣接都府県における温泉のゆう出量、温度又は成分に影響を及ぼす虞があるときは、あらかじめ環境庁長官の承認を得なければならない。
2 環境庁長官は、前項の承認を与えようとするときは、あらかじめ関係都府県の利害関係者の意見を聞かなければならない。

第十一条 【温泉ゆう出目的以外の土地掘削の条件】

 温泉をゆう出させる目的以外の目的で土地を掘さくしたため温泉のゆう出量、温度又は成分に著しい影響を及ぼす場合において公益上必要があると認めるときは、都道府県知事は、土地を掘さくした者に対してその影響を阻止するに必要な措置を命ずることができる。
2 都道府県知事が、法令の規定に基く他の行政庁の許可又は認可を受けて土地を掘さくした者に対して前項の措置を命じようとするときは、あらかじめ当該行政庁と協議しなければならない。


第三章 温泉の利用 

第十二条 【公共浴用又は飲用に供することの許可】

1 温泉を公共 の浴用又は飲用に供しようとする者は、総理府令の定めるところ により、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、政令の定める手数料を納め なければならない。
3 都道府県知事は、温泉の成分が衛生上有害であると認めるときは、第一項の許可を与えないことができる。但し、この場合においては、都道府県知事は、理由を附した書面をもつて、その旨を通知しなければならない。

第十三条 [温泉の成分等の掲示]

 温泉を公共の浴用若しくは飲用に供する者は、施設内の見易い場所に、総理府令の定めるところにより、温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意を掲示しなければならない。

第十四条 【公共的利用増進のための地域の指定】

 環境庁長官は、温泉の公共的利用増進のため、温泉利用施設の整備及び環境の改善に必要な地域を指定することができる。

第十五条 【施設等改善の指示】

 環境庁長官又は都道府県知事は、前条の規定により指定する地域内において、温泉の公共的利用増進のため特に必要があると認めるときは、総理府令の定めるところにより、温泉利用施設の管理者に対して、温泉利用施設又はその管理方法の改善に関し必要な指示をすることができる。

第十六条 【温泉管理者の報告義務】

 都道府県知事は、温泉源より温泉を採取する者、又は温泉利用施設の管理者に対して、温泉のゆう出量、温度、成分、利用状況その他必要な事項について報告させることができる。
2 通商産業局長は、工業用に利用する目的で温泉を採取する者又はその利用施設の管理者に対して、前項の報告をさせることができる。

第十七条 【立入検査】

 都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該吏員に温泉の利用施設に立ち入り、温泉のゆう出量、温度、成分及び利用状況を検査させることができる。
2 通商産業局長は、必要があると認めるときは、当該官吏に温泉を工業用に利用する施設に対して、前項の立入検査をさせることができる。
3 当該官吏又は吏員が前二項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。

第十八条 【浴用飲用許可等の取消し等】

 都道府県知事は、公衆衛生上必要があると認めるときは、温泉源から温泉を採取する者又は温泉利用施設の管理者に対して、第十二条第一項の許可を取り消し、又は温泉の利用の制限若しくは危害予防の措置を命ずることができる。

第十八条の二 【権限の委任】

 この章の規定(前条の規定に係る第二十一条第一項の規定を含む。)により都道府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、保健所を設置する市のうち政令で定める市の市長に委任することができる。
2 前項の政令で定める市の市長は、同項に規定する事務に係る事項で総理府令で定めるものを都道府県知事に通知しなければならない。

第十八条の三 【同前―経過規定】

 前条第一項の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。


第四章 諮問及び聴聞

第十九条 削除

第二十条 【審議会の意見聴取】

 都道府県知事は、第三条第一項、第四条(第八条第二項において準用する場合を含む。)、第六条 (第八条第二項において準用する場合を含む。)、第八条第一項又は第九条の規定による処分をしようとするときは、都道府県自然環境保全審議会の意見を聞かなければならない。第四章 諮問及び聴聞 第十九条 削除 第二十条 都道府県知事は、第三条第一項、第四条(第八条第二項において準用する場合を含む。)、第六条(第八条第二項において準用する場合を含む。)、第八条第一項又は第九条の規定による処分をしようとするときは、都道府県自然環境保全審議会の意見を聴かなければならない。第二十一条 

第二十一条 【公開聴聞】

 都道府県知事が、第六条(第八条第二項において準用する場合を含む。)、第九条第一項又は第十八条の規定による命令をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。 2 第五条(第八条第二項において準用する場合を含む。)、第六条(第八条第二項において準用する場合を含む。)第九条第一項又は第十八条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。


第五章 罰則

第二十二条 【罰則】

 第三条第一項又は第八条第一項の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
2 前項の刑は、情状により、これを併科することができる。

第二十三条 【同前】

 左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。 
 一 第六条(第八条第二項において準用する場合を含む。)、第七条(第八条第二項及び第二十九条第二項において準用する場合を含む。)、第九条又は第十八条の規定  による命令に従わない者 
 二 第十二条第一項の規定に違反した者

第二十四条 【同前】

 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。 
 一 第十三条の規定に違反した者 
 二 第十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者 
 三 第十七条第一項又は第二項の規定による当該官吏又は吏員の立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第二十五条 【両罰規定】

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。


別 表

一 温度(温泉源から採取されるときの温度とする。)  摂氏二十五度以上
二 物質(左に掲げるもののうち、いずれか一)
物質名 含有量(一キログラム中)
溶存物質(ガス性のものを除く。)  総量一,〇〇〇ミリグラム以上
遊離炭酸(CO2)  二五〇ミリグラム以上
リチウムイオン(Li+)  一ミリグラム以上
ストロンチウムイオン(Sr++)  一〇ミリグラム以上
バリウムイオン(Ba++) 五ミリグラム以上
フエロ又はフエリイオン(Fe++,Fe+++)  一〇ミリグラム以上
第一マンガンイオン(Mn++)  一〇ミリグラム以上
水素イオン(H+)  一ミリグラム以上
臭素イオン(Br-) 五ミリグラム以上
沃素イオン(I-) 一ミリグラム以上
ふつ素イオン(F-) 二ミリグラム以上
ヒドロひ酸イオン(HAsO4--) 一.三ミリグラム以上
メタ亜ひ酸イオン(HAsO2) 一ミリグラム以上
総硫黄(S)(HS+ + S2O3-- + H2Sに対応するもの) 一ミリグラム以上
メタほう酸(HBO2) 五ミリグラム以上
メタけい酸(H2SiO3) 五〇ミリグラム以上
重炭酸そうだ(NaHCO3) 三四〇ミリグラム以上
ラドン(Rn) 二〇(百億分の一キユリー単位)以上
ラヂウム塩(Raとして) 一億分の一ミリグラム以上


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