<温泉分析問題の例題>

◯正解です!

◇例題(2)の解答

 それでは、現在用いられている1978年に改正された「環境庁鉱泉分析法指針」による療養泉の規定を見ながら、新泉質名を考えてみましょう。まず、源泉温度が38.4℃ですので、それだけで立派な温泉と言えます。もし、含有成分がどの基準に達していなくても単純温泉と名乗れます。この場合は、pH8.58でアルカリ性ですので、アルカリ性単純温泉ということになります。しかし、成分をよく見てみると、溶存物質総量(ガス性のものを除く)が1111r/sとなっていて、泉水1sあたり1gを越えていますので、塩類泉としての泉質名がつきます。これは、“陽イオン名−陰イオン名“の形で表されますので、それぞれの主成分を見てみると、陽イオンではナトリウムイオンが、97.33ミリバル%と断然トップです。陰イオンでは炭酸水素イオンが、54.32ミリバル%でトップですので、“ナトリウム−炭酸水素塩泉“と考えていいように思いがちです。しかし、ここで副成分を見てみる必要があります。ミリバル%で20%以上の成分は副成分として、主成分の次に表記しなければならないからです。陽イオンでは、それに該当するものがありませんが、陰イオンでは硫酸イオンが、25.41ミリバル%含まれていますので、これを表記して“ナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉“としなければならないのです。これで終わりかとい うと、あと特殊な成分をチェックしなければなりません。7種類(遊離二酸化炭素、銅イオン、総鉄イオン、アルミニウムイオン、水素イオン、総硫黄、ラドン)の特殊な成分が規定以上含まれている場合には、それも表記しなければならないからです。この場合にはそれに該当するものがありませんので、やっと“ナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉“の泉質名が確定することになります。ちなみに、これを旧泉質名で表してみると、「含芒硝−重曹泉」となります。

 (1) ナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉−−−○

 (2) ナトリウム−硫酸塩・炭酸水素塩泉−−−×

 (3) ナトリウム−炭酸水素塩泉−−−×

 (4) ナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉−−−×

 (5) アルカリ性単純温泉−−−×


◇さあー、次の問題です。


☆例題(3)  <正解だと思う番号をクリックして下さい> 

【温泉の総合判定】 それでは、最後に温泉かどうかの判定から、泉質名の決定に至る、総合判定の問題にチャレンジしてみましょう。温泉法第2条別表で温泉かどうかの判定をして、1978年に改正された「環境庁鉱泉分析法指針」に基づく新泉質名を決定してみてください。それでは、以下のような温泉分析書があったとして、これは温泉と判定されるでしょうか?また、温泉ならば、泉質名は付けることができるでしょうか?温泉分析書の下の5つの選択肢の中から1つお答え下さい。

温泉分析書 

源泉名:○○温泉
湧出地:○○県△△郡□□町◇◇XXX番地

1.湧出地における調査及び試験成績

(1) 調査機関及び試験者 ○○○○研究所 氏名 ◇◇◇◇◇◇
(2) 調査及び試験年月日 昭和XX年9月9日
(3) 源泉温度 14.9℃
(4) 湧出量 5.3g/分 (自然湧出)
(5) 知覚的試験 僅微濁、弱硫化水素臭
(6) pH値 10.10 (ガラス電極法)

2.試験室における試験成績

(1) 試験機関及び試験者 ○○○○研究所 氏名 ◇◇◇◇◇◇
(2) 分析終了年月日 昭和XX年10月21日
(3) 知覚的試験 殆んど無色澄明、無味無臭
(4) 密度 0.9394 (4℃)
(5) pH値 9.70 (ガラス電極法)
(6) 蒸発残留物 0.247g/s (110℃)

3.試料1kg中の成分・分量及び組成

(1) 陽イオン (2) 陰イオン
成分 ミリグラム ミリバル ミリバル%
水素イオン
リチウムイオン
ナトリウムイオン 81.7 3.55 96.21
カリウムイオン 0.7 0.01 0.27
カルシウムイオン 0.8 0.04 1.08
マグネシウムイオン 0.4 0.03 0.81
アルミニウムイオン 0.2 0.02 0.54
鉄(U)イオン 1.1 0.04 1.08
鉄(V)イオン
バリウムイオン
クロムイオン
銅イオン
亜鉛イオン
アンモニウムイオン
マンガン(U)イオン
陽 イ オ ン 計 84.9 3.69 100.00
成分 ミリグラム ミリバル ミリバル%
フッ素イオン 1.7 0.09 1.89
塩素イオン 9.6 0.27 5.66
臭素イオン
ヨウ素イオン
硫化水素イオン 2.1 0.06 1.26
硫酸水素イオン
硫酸イオン 7.4 0.15 3.14
炭酸水素イオン 87.5 1.43 29.98
炭酸イオン 69.5 2.31 48.43
チオ硫酸イオン 2.8 0.05 1.05
メタケイ酸水素イオン 23.1 0.30 6.29
メタホウ酸イオン 4.7 0.11 2.31
リン酸水素イオン
水酸イオン
陰 イ オ ン 計 208.4 4.77 100.00
(3) 遊離成分 (4) 溶存ガス成分
非解離成分 ミリグラム ミリモル
メタケイ酸
メタホウ酸
メタ亜ヒ酸
非解離成分計
溶存ガス成分 ミリグラム ミリモル
遊離二酸化炭素
遊離硫化水素
溶存ガス成分計
溶存物質総量(ガス性のものを除く) : 0.293g/s    成分総計 : 0.293g/s

(5) その他微量成分

成分 ミリグラム 成分 ミリグラム
水銀 0.0001以下 0.005以下
カドミウム 0.003以下 亜鉛 0.002以下
0.003以下 砒素 0.003以下

 (1) 温泉法の温泉には適応しない

 (2) 温泉法第2条別表中に示されたフッ素の項で温泉法の温泉に適応する

 (3) 温泉法第2条別表中に示された総硫黄の項で温泉法の温泉に適応する

 (4) 泉質:単純硫黄冷鉱泉(低張性、アルカリ性、冷鉱泉)

 (5) 泉質:アルカリ性単純温泉(低張性、アルカリ性、低温泉)