秘湯の旅日記(38)津軽の5湯めぐり(青森県) |
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*2000年9月13日(水) 浅虫温泉→三内温泉→温湯温泉→青荷温泉 ・青森市内を巡る 太宰治ゆかりの浅虫温泉を8時半前に出立し、青森市街へと向かっていった。国道4号線を西へ走り、バイパスに出て、まずは、「青森県近代文学館」見学した。その後、市中心部へ向かい、「青森県立郷土館」を見学することにしたが、ここは特に考古展示が充実していた。県内には、縄文時代の亀ヶ岡遺跡や近年話題となっている三内丸山遺跡などがあり、注目される展示品が並んでいたが、遮光土偶と呼ばれる逸品は目を見張るべきものだった。古代人の造形の妙に感嘆する。 ・三内丸山遺跡を見学 次に、実際に三内丸山遺跡へ立ち寄ってみることにして、その方向へ車を向けた。この遺跡は、市中心部から南西へ約3キロの丘陵地帯にある。1992年度から青森県総合運動公園の拡張に伴う新県営野球場建設に伴う発掘調査によって「国内最大の縄文集落」であることが明らかになり、開発か保存かで、大問題となった。しかし、スポーツ施設より遺跡保存を望む多くの世論によって、工事を中止し遺跡を保存することになったのだ。そして、2000年(平成12)には、縄文時代の遺跡としては、全国で3番目となる国の特別史跡に指定された。そういう意味でも、かねがね一度訪れてみたいと思っていたのだ。青森県総合運動公園遺跡ゾーンの敷地内には竪穴式住居5棟、大型竪穴式住居1棟、掘立柱建物3棟などが復元されているが、大型掘立柱建物がひときわ高くそびえているのが目を引く。仮設の展示室を見てから、園内を一巡してみたが、その規模の大きさに舌を巻く、今までの縄文時代のイメージをうち破るものだ。縄文人が、定住生活し、大規模な集落を営んでいたとは驚かされる。そして、これが開発によって破壊されなくて良かったと思うばかりだ。
感動を胸に刻んでから、近くにある三内温泉で一浴していくことにした。この温泉は、青森インター近くの三内霊園入り口を過ぎたところにあり、「三内ヘルスセンター」という名前になっている。通常は入浴料金300円なのだか、特別サービスデーということで無料で入浴することが出来た。建物は古く、大規模な銭湯といった感じだが、そのお湯の良さには感激した。大きな浴槽に、何も手を加えてない源泉そのままの熱めの湯がドバトバと流し込まれていて、硫黄臭が強い。酸性も強そうで、ピリッとした浴感がする刺激的な温泉で、よく効きそうに思えた。交通の便は悪くない所だが、知られざる名湯という感じがした。
★三内温泉「三内ヘルスセンター」に入浴する。<入浴料 特別に無料>
・黒石市街を散策 上がってからは、再び車に乗って、国道7号線に出て南下し、浪岡町からは、左折して県道で、黒石市街を目指した。この街は、江戸時代の城下町で、『日本の道百選』にも選ばれた昔ながらの町並みが残っているとのことなので立ち寄ってみることにした。まず、黒石陣屋(黒石城)跡にある御幸公園に行ってみることにした。黒石藩は、1809年(文化6)、津軽・伊達郡内において4千石を知行していた津軽(黒石)親足が、宗家弘前藩より蔵米6千石を分与され、1万石になり諸侯に列したことによりはじまる。従って、そんなに大きな規模のものではない。しかし、こういう所に来ると昔の栄華今いずこという感じがして、なかなか感慨深いものなのだ。次に、車を置いて、市の中心街「こみせ通り」を散策してみたが、国指定重要文化財の「高橋家住宅」などの伝統的建造物が建ち並び、なかなかみごとな景観だ。雪国らしい、雁木づくりの通りとなっていて、積雪時の風情が偲ばれる。ついつい時間が長引いてしまったが、踏ん切りをつけて次に向かうことにした。
黒石市街見学後は、国道102号線を東進し、温湯温泉に入浴していくことにした。一帯の黒石温泉郷と呼ばれる中で一番大きな温泉地だが、昔ながらの湯治場の風情を湛えている。その中心に、共同湯「温湯温泉大浴場」があり、半地下式の建物で、周辺を「客舎」と呼ばれる簡易宿泊施設が取り巻いている。これらの「客宿」には内湯はなく、共同浴場に入りに来る昔ながらのスタイルを維持している。私も、車を駐めて、入浴しようと、階段を下りていった。入浴料は大人130円と安い。男女別に左右に分かれるが、共同浴場としては結構広く、浴槽は2つに分かれていた。半地下構造なので、少し薄暗い感じの脱衣場だが、浴室は明るい。ほど良い湯加減で、長く浸かっていたかったものの、宿に到着する時間が気になってきたので、適当に切り上げて出発することにした。
★温湯温泉「温湯温泉大浴場」に入浴する。<入浴料 130円>
再び、国道102号線に復して、南進し、浅瀬石川ダム湖畔を走っていったが、途中から左折して山道に入った。雷山の北麓を曲がりくねり、アップダウンを繰り返し、途中何度か未舗装の道に悩ませながらもようやく、青荷温泉へと到着した。さらに、駐車場からきつい坂を下ったところに一軒宿が建っていた。八甲田山系につながる山々に囲まれた山狭の秘湯といわれ、いまだに電気のないランプの宿として知られている。従って、テレビなどの電気製品は使うことが出来ない、現代では隔絶した所なのだ。開湯は、1929年(昭和4)で、櫛ケ峰から流れ出る秘境青荷渓谷沿いに本館と3棟のはなれが散在し、お風呂は3種類ある。本館内にある内風呂(男女別)、混浴露天風呂、露天風呂の脇にある別棟の内風呂「龍神の湯」(混浴)が楽しめるのだ。(注:2001年に総桧作りの別棟内風呂「健六の湯」(男女別)女子のみ露天付きがオープンし4種類となった)。荷物を置くと、日が暮れないうちに混浴露天風呂に入りに行くことにした。吊り橋を渡った対岸の渓流沿いにある岩造りのすばらしいものなのだが、すでに何人かの浴客が入っていた。見ると、若い女性もいたので躊躇したが、日が落ちてしまうと、せっかくの渓谷美を眺めながらの入浴が出来なくなるので、そのまま入ることにした。湯は適温で心地よく、湯筒から間断なくお湯が注がれている。渓流側には、大きな酒樽のような浴槽(子宝の湯)が置いてあって、そこにも湯が注ぎ込まれていて入浴することが出来る。じつに、自然に包まれた、すばらしい感じなのだ。他の浴客とも言葉を交わしたが、皆絶賛していた。一端そこを出てから、脇にある内風呂「龍神の湯」(混浴)にも入ってから、部屋へと戻ってきた。周辺は暗くなってきて、ランプに灯がともされていたが、実に暗い。昔の人は、こんな暗いところで夜を過ごしていたのかとあらためて考えさせられた。しかし、そのたよりない火を見つめているとなんだか幻想的な気分になってくるから不思議なものだ。そんな思いでいたら、夕食の準備が出来たと食堂へ呼ばれた。食卓には、鴨鍋、ヤマメの串焼き、鯉のあらい、マスの刺身、各種の山菜と地元で採れた食材が並び、お酒を冷やでたのんで、美味しく食べながら飲んで、良い心地となった。しかし、食事を終わって部屋へ戻ってもする事がない。テレビがないのはかまわないが、暗くて本も読めないのには参った。仕方がないので、喫茶コーナーに行って、他の宿泊客やご主人と歓談したが、津軽訛がきつくて、聞き取れない部分があるのも面白い体験だった。その後は、もう一度温泉に入り直すことにし、上がってからは、戻って早々に寝てしまった。
★青荷温泉に宿泊する。<1泊2食付 9,050円(込込)>
*2000年9月14日(木) 新屋温泉→大鰐温泉→碇ヶ関→古遠部温泉 ・朝、ブナ原生林の中を散策 朝は、6時頃に起床し、カメラを片手に渓谷沿いの散策へと出かけた。ブナ原生林の中の遊歩道を行くと、早朝のひんやりとした風が心地よい。立ち止まっては、シャッターを切っていた。すると、前方を浴衣姿の若い女性が一人散歩しているのが目に留まった。それが、なんともいえない良い感じで、日本の温泉地の原風景のような感じを抱かせたので、思わず、カメラの遠景に写し込んでしまった。そんなこんなで小一時間ほどで戻ってきて後は一風呂浴び、気持ちよく朝食をいただいて、8時半頃には出立した。大自然に包まれた何とも言えない魅力を持つ温泉で、また来てみたいと思いながら、坂を上っていった。 来た道を戻り、国道102号線に出て、東北自動車道の黒石インターを過ぎたところで左折して、大鰐温泉を目指すことにした。ところが、平賀町に入って、最初の集落の中に、銭湯のような温泉入浴施設を発見した。それが、あまりにも平凡な感じで、ほんとうに温泉なのだろうかと疑念を抱かせるような建物なのだ。別に、立ち寄るつもりでもなかったが、ちょっと気になったので、ダメもとのつもりで入浴していくことにした。それが、新屋温泉だった。入口を入ると受付があって、男女別に別れ、ほんとうに田舎の銭湯といった感じだ。浴室に入ってみると、結構広くて中央に10数人は入れる長方形の湯船があったが、お湯がエメラルドグリーン色をしている。なんだ、バスクリーンでも入れてあるのかとがっかりしたが、お湯に浸かってみるとちょっと浴感がちがう。湯は緑色で、透明感があり、硫黄臭もして、ぬめり感があるのだ。身体には小さな気泡がたくさんまとわり付いてきて、実に心地よい。よく見ると、浴槽の真ん中から噴水のように湯が勢いよく吹き出していて、オーバーフローし、豪快な掛け流しになっている。湯温もちょうど良く、まさに最良の天然温泉、どうして、こんな所に、こんなすばらしい温泉がと驚いてしまった。後で、掲示票で温泉成分を確認したが、源泉45.0℃、pH8.5のアルカリ性で、泉質は、含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)とのこと。これが地下約1000mから汲み上げられ、毎分300リットルの湧出量があると聞いた。何ともすばらしい数値が並んでいて、納得すると共に、満足感に浸った。偶然立ち寄った温泉で、思っても見ない良い湯に巡り会い、立ち去りがたい思いを残して、再び車を出発させた。
★新屋温泉に入浴する。<入浴料 300円>
・大鰐温泉、碇ヶ関に立ち寄る 津軽よされラインに出て、しばらく走って国道7号線に合流し、太宰治の小説『津軽』に描かれた大鰐の温泉街へと入っていった。あまりにも良い湯に入った後だったので、以前に入浴したことのある大鰐温泉は、写真を撮っただけで通過することにした。さらに国道7号線を南下していくと碇ヶ関に至り、ここに関所が復元されて、資料館となっていたので見学していくことにした。昔、津軽藩によって設置されたもので、国境をめぐる争いと歴史の一場面を思い起こさせてくれた。そこを出てからは、国道282号線を進み、ほどなくして、左折して山道へと入っていった。 未舗装の残る曲がりくねった道を進むと、山間にポツンと古びた建物が見えてきて、それが、一軒宿の古遠部温泉だった。普通の木造2階屋といった感じの玄関を開け、入浴料250円を払って、階段を下の方へ下りていったところが浴室になっていた。男女別に分かれ、数人は入れるそんなに大きくない湯船に、お湯が満ちあふれている。その光景は、すごい。湧出量毎分800リットルという41.5℃の源泉が、惜しげもなく流入し、溢れ出したお湯は、洗い場に赤茶けた堆積物を層状にしている。さらに、床の排水溝から、勢いよく宿の裏に流れ出していて、そこに大きな石灰ドームを形成しているのだ。うわさには聞いていたが、その現状を目の当たりにすると感激してしまう。お湯は、濁りのある赤っぽい色で、微少の湯の花が舞っていて、鉄臭く、飲んでみると塩味と炭酸を感じた。実に、適温で気持ちよく、洗い場で洗面器を逆さに枕の代わりとして、トドのように寝ころんでいると、背中をオーバーフローした湯が流れていく。なんとも言えない爽快感があるのだ。やはり、こういうのが本物の温泉とついつい長湯してしまった。今度来るときは、泊まってじっくりと湯を味わいたいと思いながら、宿を後にして、来た道を戻っていった。国道282号線に復して、県境を越えて秋田県へと入っていったが、津軽地方にはほんとうに良い温泉があるという思いを深くした。
★古遠部温泉に入浴する。<入浴料 250円>
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