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私の旅日記

秘湯の旅日記(24)広島県・山口県の4湯めぐり
1998.9.12-15

9/12千代田温泉 9/13三丘温泉 9/14湯免温泉 9/14俵山温泉

*1998年9月12日(土) 掛川→千代田温泉

掛川から広島へ

 JR掛川駅前のビジネスホテルで、朝6時半に起床し、7時から2階のレストランで朝食(1,000円)をとり、7時過ぎにはチェックアウトして、車を始動させた。掛川インター手前で給油して、東名高速道へと入っていった。順調に流れて、10時頃には多賀サービスエリアで休憩。その後も、スムーズに走っていったが、吹田ジャンクションから中国自動車道へ入ったところから渋滞して、ノロノロ運転となった。それも神戸ジャンクションまで続いて、なんとか越え、加西サービスエリアで、12時半頃昼食をとることができた。再び運転を続けたが、途中どこか一ヶ所立ち寄ってから、宿に向かうことにして、北房インターで下りて、満奇洞へ行くことにした。途中からは山道となり、一車線の曲がりくねった道を走ることになった。中国山地深くにある満奇洞は洞内の美しいことで知られているが、はたしてすばらしい光景が展開し、竜宮、夢の宮殿などと命名された地底湖の造形美はみごとなものだった。特に、水と鍾乳石の織りなす造形の美には目を見張った。まさに、地中の竜宮城といった趣もあって、感激した。しかし、洞内は天井の低いところがあり、背をかがめないと進めない箇所もあった。また、洞外に出て、山を下り、車を遠い駐車場へ入れてしまったことには後悔した。もっと近くまで車で入れたのに....。再び車を走らせたが、新見方面へ出る道は比較的整備されていて、順調に進み、新見インターから中国自動車道へ復した。その後もさしたる障害もなく、車を走らせ千代田インターチェンジで下りて、1qちょっとで、目指す千代田温泉には17時半頃に到着した。

千代田温泉へ泊まる

 千代田温泉は田園地帯の閑静な場所に立地し、入り口は銭湯のような感じで、すぐ横に売店があって何でも売っている。ここは、自炊客もいるのでそのためなのだろう。その奥に食堂があってメニューも掲げられているが値段は安いのだ。ここの宿泊料金は旧館と新館の2段階に分かれ、1泊2食付きで旧館2,500円(込込)、新館3,000円(込込)と異常な安さに驚く。ただし、タオル、洗面道具、浴衣などは別料金となっているが...。私は、新館の方にしたが、どんな部屋なのかと少々心配だったものの、木造アパートの一室といった感じで部屋もそう古くなく、清潔にしてあってホッとした。しかも、コイン式ではあるが、テレビもクーラーも付いている。浴場は男女別に分かれ、新しくてきれいだ。その上、気泡浴、サウナも楽しめ、泉質も沸かしてはいるが、立派な放射能泉で、効能も高いと聞いた。浴室の一番奥にある褐色の湯が源泉を沸かしたもので、湯温もちょうどよく心地よく入浴することができた。食事は1階の食堂でとるが、料金内で出されるのは一汁一菜、つまり、ご飯と汁とおかず一品だけ(漬物は食べ放題)で後は追加で料金を払って注文するシステムだ。そのために色々なメニューが用意されていて値段も安い。しかし、お年寄りなどは、その一汁一菜だけで食事を済ませている。なるほどと感心した。普通の旅館は高い料金を取って、何品もの夕食を出し、食べきれなかったり、嫌いなものがあったりして、残しても料金を引くことはない。しかし、ここのシステムは、安い料金を設定し、最低限のものだけを提供して、後は、それに追加して料金を取るシステムなのだ。私は、とても考えられた合理的なものだと思う。自分の食べられるだけ好きなものを追加注文すれば良いのだから。そうすれば、無駄な食べ残しも少なくなるのではないだろうか。まわりを見てみると、常連客が多いようで、当然のように追加料理を注文し、楽しく語らいながら食事をしている。中には家族連れもいて、ほほえましい光景だった。とても納得しながら、飲みかつ食べて食事を終え、後は部屋に戻って、テレビを見ながら寝てしまった。

千代田温泉旅館の外観 千代田温泉旅館の男性浴場

★千代田温泉「千代田温泉旅館」宿泊<1泊2食付 3,000円(込込)>

宿


千代田温泉旅館のデータ (閉館しました)
標準料金 1泊2食付 旧館2,500円〜(込込) 新館3,000円〜(込込)  
入浴料 入浴のみ250円 休憩3時間以内400円 1日600円
定員 室数30
住所、電話 〒731-15 広島県山県郡大字南方4796 TEL(0826)72-2280
交通 JR可部線可部駅よりバス大朝、浜田、大田行き40分千代田下車後徒歩30分
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進

*泉質別適応症(浴用)
 
痛風・動脈硬化・高血圧症・慢性胆嚢炎・胆石症・慢性皮膚病・慢性婦人病




源泉名 千代田温泉2号
湧出地 広島県山県郡千代田町大字南方7036
湧出量 23g/分(動力揚湯)
知覚 微褐色 微濁 収斂味 無臭
泉質 単純弱放射能泉
泉温分類 17℃(冷鉱泉)
pH値 6.6
液性分類 中性
溶存物質総量 229.5r/s
浸透圧分類 低張性
ラドン含有量 31.9マッヘ/s

*1998年9月13日(日) 広島岩国→柳井→三丘温泉

朝の散歩に出かける

  朝6時に起床し散歩に出る。宿の裏手に温泉の由来が書かれたものがあり、仏像がまつられてあった。裏手の山の方へ歩いていったら、途中からお年寄りといっしょになり、この宿のことや地域のことについて色々話を聞いた。旧館の方は学校の校舎を移築したとのことで舞台もあるという。のんびりと山道を歩き、4,50分で戻ってきて、7時から朝風呂に行った。散歩の疲れが抜けていくようで、とても心地よい。7時半から食堂で朝食となったが、これも一汁一菜で、ご飯とみそ汁と菜一品、ご飯の方はお変わりは自由にできる。私は、昨日だいぶ飲み食いしたので、これだけで充分だった。

広島平和公園へ

 荷物をまとめて、「千代田温泉旅館」を出て、車で県道を南下し、国道54号線(出雲街道)に出て、さらに南へと向かった。広島市内に入って、さらに南下し、広島城の脇を通って、平和公園へ至った。駐車できるスペースを探して、しばらくうろうろしていたが、公園脇の道路にパーキングメーターを見つけ、車を停めた。まず、原爆ドームを見ようと思って、川沿いに歩くうちに、一つの碑を見つけ、とてもびっくりした。あの中曽根元首相の句碑なのだが、なぜこの平和の象徴広島の地に、軍拡推進論者の元首相の碑があるのか、疑問で仕方がない。広島の人々はいつもこの碑をどう見ているのだろうか?さらに少し行くと、原爆ドームの全容が間近に迫ってきた。被爆当時、広島で一番近代的、美的な建物といわれた産業奨励館も廃墟となって、世界に原爆の恐ろしさを訴えている。この、原爆直下ではほとんどの人が死亡し、いまだに行方のわからない人も多いと聞いた。ドームをとりまく碑群には多くの千羽鶴が飾られ、訪れる人の祈りを受けていた。そこを離れ、橋を渡り、平和公園の中に入っていくと、そこにも様々な記念碑があり、千羽鶴や花束で埋まっている。それらに手を合わせながら、平和資料館の方へ歩いていった。

平和資料館で考える

 以前に3回ほど訪れたことがあるが、何度来ても、その原爆の凄まじさが胸に突き刺さる。今回は、特別企画で原爆の惨状が児童画によって展示されていて、その稚拙な絵の中に想像を絶する地獄絵を見、目頭が熱くなった。また、「戦前の小学校教育における戦争」が特別テーマで取り上げられ、軍国主義教育を記録した映像を見て、その子ども達が戦争に駆り立てられていく様子に、釘付けにされてしまった。もう50年以上前のことではあるが、こうやって国家によって戦争が進められたのかと認識を新たにする思いだった。その後も、通常展示による広島への原爆投下の実態を見せつけられて、戦争・原爆に対する怒りがわき上がってきた。現在でも、インド、パキスタンが新たに核実験を始めるなど、世界中に核兵器が保有され、核戦争の脅威にさらされている。それらの核保有国にこの広島の惨状をよく見てほしいと思うと共に、核兵器廃絶の必要性を痛感した。

原爆ドーム

広島平和都市記念慰霊碑

広島「お好み村」で昼食

 万感の思いを胸に、平和公園を出ると、現実に引き戻され、昼近くなって、かなり空腹になっていることに気がついた。そこで、広島名物のお好み焼きを食べることにして、お好み焼き屋が、ビルの中に何十軒も集まっているという「お好み村」に足を向けることにした。まだ正午前だったので、各店とも空いていて、3階の一番奥の店に席を占めて、お好み焼きを注文した。色々な者をトッピングできるるようになっていたが、私はネギをたくさん載せてもらうことにした。広島のお好み焼きの特徴は焼きそば又はうどんが中に入ることで、とてもボリュームがあり、お腹がいっぱいになった。

岩国を散策する

 そこを出て、進路を西に取り、国道2号線を進む、しばらく市街地を進むと視界が開けてきて、瀬戸内海が見えだしてきた。対岸は、日本三景のひとつ安芸の宮島で、その美しい島影を左にみながら、車を走らせて、山口県境を越え岩国市街へと入ってきた。ここは、なんといっても日本三名橋の一、錦帯橋が有名で、迷わずそこへ車を向けた。河原の大駐車場に入れて、仰ぎ見ると、弓なりになった橋が連なり、独特の景観を形作っている。錦川をはさんで、遠く山上に岩国城天守閣が望まれて、彩りを添えている。さっそく、共通券(錦帯橋通行料、ロープーウェイ、天守閣登閣料含む)を買って、橋を渡って、岩国城まで行ってみることにした。錦帯橋は江戸時代に作られ、太鼓橋をいくつも連ねたような構造で、橋が流されないための工夫だというが、惜しくも1950(昭和25)年9月14日のキジア台風で流失し、3年後に再建されたものと聞いた。橋上からの眺めはすばらしく、構図を変えて、何枚かシャッターを切った。渡り終わって、まっすぐ進むとそこが藩主の御殿跡で、今は公園となっている。その手前で、右に折れ、少し歩くと堀端に出るが、古い武家屋敷の跡などあって、昔ながらの風情をとどめている。その堀に沿って、山に向かっていくと、ロープーウェー乗り場が見えてきた。乗り場の前に小さな建物があり、白蛇観覧所とある。寸志を納めて、覗いてみると、ガラスのケース越しに数匹の白蛇がうごめいている。説明を見ると、アオダイショウの突然変異のとのことで、この辺にしか生息しない、貴重なもので天然記念物になっているという。私は、あまり蛇が好きでないので、早々に退散して、ロープーウェイ乗り場へと向かった。

錦帯橋 岩国城ロープウェイ

ロープーウェーで岩国城へ

 今日は日曜日で混雑していることもあって、ロープーウェイは随時運行していて、そう待たずに山上へと運んでくれた。頂から見る眺望はすばらしく、錦帯橋から市街までが一望できる。そこから、5分ほど尾根伝いに歩くと岩国城の本丸で、吉川氏が建てたという、天守閣が復元されていた。しかし、天守台とは別の場所に、錦帯橋からの眺望を考慮して建てられたもので、史実には基づいていない。時々こういう復元をした天守閣等に立ち寄ることがあるが、歴史認識が誤っていると思う。天守閣の建っていた場所がわからないのならいざ知らず、はっきりと天守台の位置がわかっているのなら、そこに復元すべきではないか。単なる観光目的の展望台にされてしまうのはあまりに悲しいと思うのだが....。ともあれ、天守閣最上階からの眺めはとても良く、はるか、瀬戸内海まで遠望することができ、展望台としてはすばらしいと思う。城跡をぐるっと巡ってから、再び、ロープーウェーで下山して、麓にある、博物館や美術館を回ってみた。まず、ロープーウェイ乗り場の脇にある岩国歴史美術館を見て、吉香神社の境内を通って、郷土資料館に立ち寄り、吉川資料館へと向かった。この堀の周辺は昔の武家屋敷の面影がよく残されていて、その一つの長屋門を入ったところにその資料館があった。内部は、新しい建物になっていたが、庭園もよく整備されていて、日本的な美しさを見せている。しばし、見学の後、つれづれに歩いて、再び錦帯橋を渡り、河原の駐車場へと戻っていった。

岩国城の復元天守閣 吉川資料館

柳井市街を巡る

 ほどなくして岩国を離れ、西に進路をとり、瀬戸内海を左手に見ながら、快調に走り続けて、16時頃に柳井市街へと入ってきた。市営の駐車場に車を入れ、市街を散策してみたが、昔ながらの蔵づくりの街並みが残されていて、重要伝統的建造物群保存地区に指定されているとのこと。まず、その一軒で、公開されている古い商家の「むろやの園」を訪れた。奥行きの長い造りで昔ながらの商家のたたずまいを残している。蔵がいくつもあるが、その中が展示室となっていて、この屋の商いがわかるようになっている。昔は油問屋をしていたようで、裏口は柳井川に通じていて、荷の上げ下ろしをしたとある。そこを出て古い街並みを歩いていくと、左側にまた一軒古い商家があって公開されている。表に国指定重要文化財「国森家住宅」とあったので、中を見学させてもらうことにした。ここでは、係りの女性がていねいに説明してくれたが、その構造がよくわかり、いろいろな工夫がされていることに驚いた。隠し階段や二階から荷を降ろすための滑車、防火のためのシステムなど昔の人の知恵に感心させられた。もう、夕方5時近くなって、宿へ行く時間も気になってきたので、そこを辞去して、再び街並みをぶらつきながら駐車場へと戻っていった。こういう街並みは、いつまでも保存してほしいものだと思いながら、柳井を後にして、三丘(みつお)温泉へと向かった。

柳井市街の蔵づくりの町並み

三丘温泉へ泊まる

 30分もしないうちに目的の温泉地にはついたものの予約した旅館がみつからない。そんな大きな温泉地でもないのに看板が見えないのだ。いったん通り過ぎて、戻り、たばこ屋で聞いてやっと場所がわかった。川沿いを山手に進んだ、温泉街の一番奥にその「つるや旅館」を発見したが、ずいぶん古い建物で、駐車場に車を入れようとして、子猫が道をふさいでどかないのには困った。玄関もいたって古風な造りで、案内を乞うと、女将が出てきて、玄関脇のレトロな一室に通された。年代物のテーブルと椅子、飾り棚など建物の外観とは似つかわしくないほど高級感の漂う一室で、戦前の旧家の食卓といったところで、しばらく待たされた後、飲み物の接待を受けた。その後、2階の部屋に通されたが、これも古くて、相当痛んでいる。しかし、広くて次の間がつき、窓からの庭園の眺望も良くて、一時代前の映画に登場してくる旅館といった雰囲気がする。さっさく、浴場に向かったが、これも建物は古いものの、その岩風呂はなかなか立派な造りだ。湯温もちょうどよく、ゆっくり浸かるにはもってこいで、泊まり客も他にいないようなので、浴室を占領して、心いくまで温泉を楽しんだ。湯から上がって、部屋で休んでいると、「夕食の用意ができました。」と呼ばれた。食事は1階の玄関脇の来たときに通された部屋で、テーブルには何品もの料理が並び、なかなか豪華なメニューだ。この部屋の感じといい、この食事といい、この時ばかりは、レトロな高級ホテルでの一時といった感じに浸れて、不思議な気分になるのだ。おいしく食事をいただき、お酒も飲んで、いい気分になって、部屋へと戻っていった。後は、テレビを見ながら寝てしまった。

★三丘温泉「つるや旅館」に宿泊する<1泊2食付 9,075円(込込)>

三丘温泉「つるや旅館」の外観 三丘温泉「つるや旅館」の浴槽
宿


三丘温泉「つるや旅館」のデータ
宿泊料金 1泊2食付 8,500〜10,000円(込別) 
入浴料金 外来入浴不可
定員 木造2階建 和室6室 18名
住所、電話 〒755-0641 山口県熊毛郡熊毛町小松原東善寺下1693 TEL(0833)91-0250
交通 JR山陽本線島田駅よりバス10分「三丘温泉」下車後徒歩10分
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進

*泉質別適応症(浴用)
 
痛風・動脈硬化症・高血圧症・慢性胆嚢炎・胆石症・慢性皮膚病・慢性婦人病




源泉名 三丘温泉
湧出地 山口県熊毛郡熊毛町小松原
湧出量
知覚 無色透明
泉質 単純弱放射能泉
泉温分類 ?(冷鉱泉)
pH値
液性分類
溶存物質総量
浸透圧分類 低張性
ラドン含有量
三丘温泉「つるや旅館」の夕食 三丘温泉「つるや旅館」の朝食

*1998年9月14日(月) 秋吉台湯免温泉→青海島→俵山温泉 

朝の散歩へ出かける

 朝6時に起き、ぶらぶらと散歩に出かけた。周辺はのどかな山里で、低い山に囲まれた谷間になっている。川沿いにゆるやかな坂を上っていくと、段々になった田圃が黄金色に輝いている。畦道には、曼珠沙華が鮮やかな赤を呈し、赤黄のコントラストがすばらしく、山を遠景に写し込んで、何枚かシャッターを切った。この季節の朝の散策は空気が澄んでいて、気持ちよく、自然を感じ取れるのだ。1時間弱ぶらついて、宿に戻ってから、昨日と同じ場所で、朝食となった。腹を満たしてから、手早く荷物をまとめ、8時半頃には出立することになった。

三丘温泉周辺の農山村風景

秋芳洞・秋吉台を探索する

 途中、山陽自動車道を使って、時間を稼ぎ、秋芳洞へと車を向けた。有料駐車場に車を入れ、しばらく歩くと、両側に土産物屋がびっしりと並んだ通りに出、さらにそこを歩いていくと、鍾乳洞の入口だ。学生時代に一度来たことがあるが、大きな洞口が開き、清流がとうとうと流れ出している。中に入っても洞内は広く、みごとな鍾乳石や石筍がみられる。ただ、観光客も多く、ぞろぞろと歩いていく様はとても洞窟探検といった趣ではない。そういった、意味では一昨日に立ち寄った満奇洞の方がよっぽど探検の雰囲気が味わえる。しかし、この洞窟の規模はたいしたもので、数階建てのビルがすっぽりと入ってしまうほどのものだ。そこを巡っていくと、百枚皿、洞内富士、千町田、千畳敷、黄金柱などの見所が随所に展開していて、目を見張らせる。最奥の黒根新洞まで足を延ばして、戻ってきたが、結構な距離を歩いたことになり、少々疲れた。再び車に乗って、今度は、この鍾乳洞の上部に展開するカルスト台地秋吉台の景観を眺めてみることにした。展望台の少し先に科学博物館があって、無料で入場できたが、そこに展示された秋吉台生成の過程には興味を持ち、そこに生息する面白い動植物にも関心を持った。さらに、車でカルスト平原をドライブしたが、ここが、アメリカ軍の演習場にされかかって、住民の反対で、自然公園として守られたことを知って、その雄大な自然が残されたことがうれしかった。所々に地形の凹凸があり、いたるところから石灰岩が墓標のようにつきだしている。途中、車を停めて、付近を散策してみたが、蝶やトンボが飛び交い、秋の風情を醸し出していて、その広々とした景観と共に心に焼き付いた。一息入れてから、車を動かし、北へ進路をとったが、この自然をいつまでもそのままにしておいてほしいと願わずにはいられなかった。

秋芳洞の入口 百枚皿

萩市内を散策する

 しばらく運転を続けて、萩市内へと入ってきたが、表通りにも落ち着いた風情が感じられる。ちょうど昼時間になっていたので、ガイドブックに載っていた、「ふじたや」というそば屋に行ってみることにした。狭い路地を入って、対向車とのすれ違いに苦慮し、一方通行をぐるっと回り込んで、ようやく目的の店を探し当てた。路地裏の目立たないつくりで、昔ながらの商いをしている感じだ。店内はいっぱいで少々待たされたが、そばの味はなかなかのものだった。大盛りの天ざるそばをじっくり平らげて、満たされた腹をかかえて、萩城趾へと向かった。石垣と堀だけが残る城趾は、指月山を背景にとても静かにたたずんでいた。平日のこととて、訪れる人も少なく、広い敷地を巡ってみても、閑散としていて、過ぎし日の盛衰を感じるにはうってつけだ。ここが、明治維新回天の原動力の一つとなったとはとても思えないほどだが....。ゆっくりと散策してから戻ってきて、車で市街の重要伝統的建造物群保存地区へと向かった。この一角には、土塀が続き、昔ながらの武家屋敷群が保存されている。その中に、吉田松陰門下の木戸孝允や高杉晋作という明治維新に活躍した人々の旧宅が含まれていて、歴史を振り返るにはうってつけだ。この、静かな旧毛利藩の城下町が、脚光を浴びた130年ほど前、幾多の人材を輩出し、歴史転換に大きな役割を果たしたのだ。そんなことを考えながら街を歩いていると、大きな商家「菊屋家住宅」があり、内部を公開していた。昔の繁栄を今に伝える、丁度の数々や庭園の立派さには驚かされ、当時を追想するには貴重なものだと思う。そんな、充実した散策の後、車をさらに西に向けて、国道191号線を走った。

萩城跡と指月山 堀内地区の武家屋敷群

湯免温泉へ入浴

 途中、湯免温泉の看板を見つけて、立ち寄ってみることにしたが、あいにく、町営の温泉センターは休館日で、掃除をしていた人に聞いたら、すぐ前に「湯免観光ホテル」付属の大衆浴場があるとのことで、そちらに入浴することにした。ホテルの裏口のような所から入っていくと、銭湯風の浴室があり、何人かのお年寄りが入浴していた。湯は無色透明で、とても入りやすい。広々とした浴槽にゆったりと体を伸ばし、長時間のドライブと旅の汗を洗い流した。温泉の掲示をみると、ラドンが含有されているとのことで、この方面にはそういう泉質が多いようだ。

湯免温泉「大衆浴場」の入口 湯免温泉「大衆浴場」の浴室

★湯免温泉「大衆浴場」に入浴する。<入浴料 300円>







湯免温泉「大衆浴場」のデータ
入浴料金 大人(中学生以上)250円、小学生150円、幼児80円
営業時間 午前10時〜午後8時
住所、電話 〒759-3802 山口県大津郡三隅町湯免温泉 TEL(0837)43-2000
交通 JR山陰本線長門三隅駅よりバス5分
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進
*泉質別適応症(浴用)
 
痛風・動脈硬化症・高血圧症・慢性胆嚢炎・胆石症・慢性皮膚病・慢性婦人病




源泉名 湯免温泉
湧出地 山口県大津郡三隅町湯免温泉
湧出量
知覚 無色透明
泉質 単純弱放射能泉
泉温分類 39℃(温泉)
pH値 9.8
液性分類 アルカリ性
溶存物質総量 303.933r/s
浸透圧分類 低張性
ラドン含有量 9.35マッヘ/s

青海島へ

 再び、車を走らせて、青海島へと向かった。仙崎漁港の上を跨たぎ、海峡を越えて、立派な橋がかかっている。島内に入って、車で行けるところまで、行こうと走り続けたら、その先に「くじら資料館」があるというので、立ち寄ってみることにした。このあたり、昔には捕鯨が行われていたとのことで、当時の写真や捕鯨法、道具などが展示されていて、その歴史を振り返ることができた。前の売店をのぞくと、最近では珍しい鯨の缶詰を売っていたので、買い求めて旅先での酒の肴にすることにした。近くに、珍しいくじら墓があるというので、歩いていってみたら、階段を上がった少し高いところに立っていた。こんな墓ができるほど、頻繁に鯨が捕獲された時期があり、村人の生活の中にとけ込んでいた証左であろう。風光明媚な青海島だが、一週する道路はないので、再び来た道を引き返し、今日の宿泊地俵山温泉へと向かった。

青海島の「くじら資料館」 青海島のくじら墓

俵山温泉へ至る

 長門市を南下し、山間に入っていったところに温泉街が形成されていて、湯治場の風情を残し、国民保養温泉にも指定されている。私が泊まる「福隅旅館」も昔ながらの建物で、内湯が無くて、外湯に通う形態を保っている。以前は、そういう温泉地も多かったのだが、ほとんどの旅館が内湯を持つようになり、浴衣着て、手ぬぐい下げ、下駄をカランコロン鳴らして外湯通いという光景は少なくなった。昔ながらの温泉情緒を保つ貴重なところで、この旅館もコの字型に造られた中庭にみごとな庭園があり、部屋では湯治客が銘々のスタイルでくつろいでいて、いかにも湯治場といった感じがする。私も、荷物を部屋に置くと、さっそく外湯への出かけてみた。宿から少し下がったところに、共同浴場「町の湯」があり、その先に「川の湯」があるのだが、まず、手前の「町の湯」から入ることにした。建物は、近年立て替えられていて、近代的でモダンなものとなていて、ちょっとそぐわない感じがした。これだけの昔ながらの湯治場の風情が残る街並みなのだから、それにふさわしく、木造でレトロな感じの方がよかったのではないか。そんなことを思いながら入浴したが、お湯はとても入りやすく、長湯したくなるような泉質だった。宿に戻って、ほどなくして部屋での夕食となったが、とてもおいしくて、お酒を飲みながら、じっくりと味わった。後は、テレビを見ながら横になって寝てしまった。

俵山温泉「福隅旅館」の外観 俵山温泉「町の湯」の外観

★俵山温泉「福隅旅館」に宿泊し、「町の湯」へ入浴する。
<1泊2食付 8,400円(込込)><入浴料 340円>

宿


俵山温泉「福隅旅館」のデータ
宿泊料金 1泊2食付 8,000〜12,000円(込別) 
定員 木造2階建 和室12室 30名
住所、電話 〒759-4211 山口県長門市俵山湯町660-2 TEL(0837)29-0014
交通 JR美祢線長門湯本駅より下関・俵山温泉方面行バス24分俵山下車徒歩5分






俵山温泉「町の湯」のデータ
入浴料金 大人(中学生以上)340円、小学生150円、幼児(6歳未満)80円
営業時間 午前6時〜午後11時半、年中無休
住所、電話 〒759-4211 山口県長門市俵山湯町 TEL(0837)-29-0001俵山温泉合名会社
交通 JR美祢線長門湯本駅より下関・俵山温泉方面行バス24分俵山下車徒歩5分
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進




源泉名 俵山温泉(町の湯泉)
湧出地 山口県長門市俵山湯町
湧出量 41.6g/分
知覚 無色澄明、僅微硫化水素臭
泉質 アルカリ性単純温泉
泉温分類 41.6℃(温泉)
pH値 9.7
液性分類 アルカリ性
溶存物質総量 173r/s
浸透圧分類 低張性
ラドン含有量 0.66マッヘ/s
俵山温泉「福隅旅館」の夕食 俵山温泉「福隅旅館」の朝食
俵山温泉の公式ホームページへ

*1998年9月15日(火) 津和野へ 

朝の温泉街へ

 朝、6時過ぎに起床し、恒例の散歩に出た。温泉街の朝は静かだが、もう外湯に通う人々が動き出している。細長い街並みをつれづれに歩いていくと、もう一つの外湯「川の湯」の前に出たが、もう共同浴場は開いていて、浴衣姿の浴客が中に入っていく。私は、散歩の後に入浴することにして、前を通り過ぎ、川の方へと歩いていった。この川筋に沿って旅館や商店がびっしりと建ち並んでいて、湯の町の雰囲気が一番感じられる所だ。温泉街の朝は早く、もう開店の準備をしている店もある。温泉饅頭を蒸かす煙が上がり、道路を掃いている人の姿もみえる。そんな町を小一時間ほど散策して、いったん宿に戻り、タオルを手にしてから、「川の湯」へと向かった。こちらの方は「町の湯」ほど新しくないが、それでも近代的なつくりで、入浴しながら川が眺められる。また、泉質も少し、異なっているように感じた。すでに、大勢の人が入浴していて、話し声があちこちから聞こえ、湯治に来ている人々の交流の場となっていることがわかる。そんな人々と言葉を交わしながらの入浴は楽しいもので、時間のたつのも忘れてしまう。少々長湯して、宿の方に戻って、すぐ朝食となった。食後は、ゆっくりと支度をして、8時半過ぎには車で出立した。

俵山温泉「川の湯」の外観 俵山温泉街

★俵山温泉「川の湯」に入浴する。<入浴料 340円>







俵山温泉「川の湯」のデータ
入浴料金 大人(中学生以上)340円、小学生150円、幼児(6歳未満)80円
営業時間 午前6時〜午後10時、年中無休
住所、電話 〒759-4211 山口県長門市俵山湯町 TEL(0837)-29-0001俵山温泉合名会社
交通 JR美祢線長門湯本駅より下関・俵山温泉方面行バス24分俵山下車徒歩5分
*一般的適応症(浴用)
 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進




源泉名 俵山温泉(川の湯)
湧出地 山口県長門市俵山湯町
湧出量
知覚 殆ど無色澄明、微硫化水素臭
泉質 アルカリ性単純温泉
泉温分類 41.7℃(温泉)
pH値 9.8
液性分類 アルカリ性
溶存物質総量 213r/s
浸透圧分類 低張性
ラドン含有量 2.2マッヘ/s

津和野へ

 今日は、朝からは天気が心配されたが、まだ、なんとかもっているようだ。来た道を戻りながら、萩市を過ぎて、山間部に分け入り、島根県の津和野町を目指した。

秘湯の旅日記(25)島根県・鳥取県の秘湯4湯めぐりへ続く
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