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私の旅日記

秘湯の旅日記(34)秋田県・宮城県の3湯めぐり
2000.5.4-5

5/4 湯ノ沢温泉 5/5 湯ノ岱温泉 5/5 吹上温泉

*2000年5月4日(木) 

・細い一本道をどんどん山奥へ

  真室川の町を過ぎ、さらに県道を北上していくと国道13号線に合わさった。その後は徐々に山が深くなっていき、県境を越えて、秋田県雄勝町へと入っていった。かつては鉱山で栄えた院内の街から、右折して細い一本道をどんどん山奥へと進んでいったが、実に心細い道で、車一台がやっとという幅で、舗装も満足でなく、揺れがひどい。さらに、入り口に看板があった以外は、なんの案内板もなく、人家もとぎれて、ひたすらに山に向かっていくだけなのだ。道は曲がりくねり、勾配もきつく、残雪も見られるようになって、ほんとうにこんな所に温泉宿があるのだろうかと不安が増してきた5時少し過ぎに、ようやく前方の山肌にへばりつくような建物を見つけた。道は赤い木橋のところで途切れ、数台の駐車スペースがあったが、すべて埋まっていた。仕方がないので、恐る恐る急坂をバッックさせ、ちょっと道が広くなったところの谷側に車を止め、ハンドルを大きく切って、タイヤに滑り止めの小石をかませた。しかし、すごい所に温泉宿があるものだ。周りは深い山に囲まれ、前を流れる谷川は急流となり、滝を成している。橋を渡って、急な石段を登って、玄関にたどり着いたが、まさに秘湯といった趣だ。 

・湯ノ沢温泉「日勝館」に泊まる

 案内を請うと、主人が出てきて、すぐ係りの女性が部屋まで導いてくれた。旧館の方なので、建物は古いが、部屋の眼下に渡ってきた谷川を雪解け水が轟々と流れ、景色はとても良い。眺めには気に入って、すぐに荷物を置くと浴場へと向かった。浴室はそんなには広くなく、数人で満杯といった感じだが、しっかりとした木の湯船に、お湯がとうとうと流れ込んでいた。入ってみると、ちょっとぬるめだが、湯は透明に澄み、アルカリ性が強いため、肌がぬるぬるして気持ちがよい。浴客の一人に聞いてみたら、源泉は40度だが、豊富に涌きだしているので、そんなに冷めることなく、24時間流し放しとのこと。実に、きれいに透き通っていて、“針一本落としても見える”という気持ちの良い名湯に、感じ入って、長めに湯に浸かっていた。後で、宿の人に聞いたら、傷によく効き、長期の湯治客も多いが、冬期間は雪が深いため11月半ばから休業で、5月1日にオープンしたばかりとのこと。また、パンフレットには、平安時代の後三年の役からの帰途、源義家がこの湯に将兵を休ませたとの伝承があり、江戸期も湯宿が営まれていたが、明治元年(1868)洪水で一切を流失してしまったとある。その後、温泉宿が再建されたとき、ちょうど日露戦争に勝利した後だったので、屋号を「日勝館」と名付けたと書かれていた。

・夕食を食べながら秘湯談義に花が咲く

 湯から上がって、部屋に戻ると、ほどなくして別室で夕食の用意が整ったと呼ばれた。旧館の泊まり客が一堂に会しての食事となったが、いろいろな客と語らいながらの夕餉も楽しいものだ。さすがに、連休中にこんな山奥の温泉に来るのは、温泉好きの人ばかりで、秘湯巡りの話題に花が咲いた。中に、86歳の耳の不自由な父親を連れ立った50歳台の人がいて、最近発行された旅行読売出版社の「秘湯の宿100」という本に出ていた温泉に、今朝片っ端から電話をして、やっとこの宿を取れたと話してくれた。私も、昨晩電話して、ようやく予約したことを語ったが、同じようにして温泉巡りをしている人もいるものだと面白く感じた。料理も川魚の塩焼きや山菜などが並び、お酒を冷やで2本ほど頼んで、おいしく語らいながらの心地よい飲食となった。後は、部屋に戻って、テレビで野球を見ながら、早めに寝てしまった。

山肌にへばりつくような湯ノ沢温泉「日勝館」
☆湯ノ沢温泉「日勝館」に泊まる。<1泊2食付 7,350円(込込)>
湯ノ沢温泉「日勝館」の入口 “針一本落としても見える”という透明な湯
宿


湯ノ沢温泉「日勝館」のデータ
標準料金 1泊2食付6,500円~(込別) *冬季(11月中旬~4月)休業
浴室 内湯2(男1・女1)
入浴料金 大人300円 小人200円
外来入浴時間 午前10時~午後4時
宿泊定員 木造2階建 和室14室 
住所、電話 〒019-0112 秋田県雄勝郡雄勝町下院内字湯の沢 TEL(0183)52-4129
交通 JR奥羽本線院内駅より徒歩40分または、横堀駅よりタクシー15分
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進




源泉名 湯ノ沢温泉
湧出地 雄勝郡雄勝町下院内字湯の沢国有林71林班
湧出量 86㍑/分(自然湧出)
知覚 無色透明、無味
泉質 アルカリ性単純温泉
泉温分類 39.6℃(温泉)
pH値 9.3 
液性分類 アルカリ性
溶存物質総量 137.7㎎/㎏
浸透圧分類 低張性
「日勝館」の夕食 「日勝館」の朝食

*2000年5月5日(金) 

・早朝の散歩

  朝、6時前に起床し、6時半から散歩に出かけたが、早朝の山の空気は清々しい。昨日、車で上ってきた曲がりくねった道を、カメラを首から掛けて、ぶらぶと下りながら、時々立ち止まってはシャッターを押していった。周辺は、深い山に抱かれ、少し下ったところが、多少開けていて、渓流が蛇行し、湿原のようになっている。この辺は、山形県との境にそびえる烏帽子山(標高 954m)の北麓に位置するとのこと。あたりには、雪解けを待つように開き始めた可憐な草花が、所々に見られる。紫の小さな花弁を付けたものや白い5弁の花びらを慎ましやかに広げているもの、鳥のくちばしのような蕾を垂れ下げているものなど、20数㎝の間近にレンズを持っていって、接写を試みたが、フレームに写る姿が、本当に愛らしい。この時期、いろいろな山菜も芽吹き始めている。そのかわいらしい姿をカメラに収めていると、取って食べてしまうのがもったいないような気がしてくるのだ。 そんなことを道々やりながら、下っていったら、いつのまにか時が立ち、もう引っ返さなければ7時半の朝食に間に合わない時刻となってしまった。仕方がないので、朽ち果てた社の前からUターンしようとしたが、そこにも、道端の小さく澄んだ雪解け水の流れに、白い小さな花を見つけ、思わずカメラを向けてしまった。その後は、急ぎ気味に、坂道を上っていったが、のんびり下ってきたせいか意外に距離は短く、ほどなくして宿に戻ってしまった。

 
湯ノ沢温泉「日勝館」周辺の新緑 カタクリのつぼみ
キクザキイチゲのつぼみ ムラサキスミレ

・朝風呂と朝食

 それでは、朝食前に、あの名湯にもう一浴したいと、浴室に足を向けた。誰もいない浴槽で、足をのびのびさせ、木の浴槽の肌触りと、澄み切ったぬるぬるの湯に浸かっていると散策の疲れがすっーと抜けていく気分になる。ほんとうに気持ちの良い湯なのだ。長く浸かっていたかったが、朝食の時間もあるので、10数分で上がってきて、前日と同じ、食事の用意されている部屋へと向かった。朝の散策と入浴後の朝食はおいしく、かつ進み、へろっと平らげて心地よく自室へ戻ることができた。8時過ぎには荷物をまとめ、出立したが、山奥の知られざる名湯といった趣は、しっかりと心に刻まれ、その山肌に寄り添うように建つ湯宿を振り返りながら名残を惜しんだ。

・湯ノ岱温泉「旅館松の湯」に立ち寄る

 帰路も曲がりくねった山道に気を付けながらハンドルを切って、再び国道13号線へ出てから北上し、途中右折して国道108号線(仙秋サンライン)に入り、秋の宮温泉郷を目指して走っていった。湯ノ沢温泉と同じ雄勝町内でも、宮城県境に近い奥羽山中、役内川沿いに点在する4つの温泉(湯ノ岱、稲住、鷹ノ湯、湯ノ又)を総して秋の宮温泉郷といい、国民保養温泉地にも指定されているという。今回はどの温泉に入ろうかと思案したが、国道沿いにある湯ノ岱温泉「旅館松の湯」に立ち寄ることにした。湯ノ岱温泉といっても、集落の中に数軒の静養・保養向け湯宿が点在しているだけで、温泉街という感じではない。しかし、落ち着いた自然環境に包まれ、それぞれが、湯量豊富な高温源泉を持っていると聞いていた。「旅館松の湯」は、松林に囲まれた小さな宿で、部屋数も10室ほどしかないが、露天風呂を備えている。玄関で、案内を請うと感じの良い女将さんが出てきて応対してくれた。入浴料500円也を払って、まず内湯に向かったが、ちょっと濁りのあるお湯が掛け流しになっている。浴感もよく、暖まる気持ちのいい湯だ。中庭には、露天風呂があるが、立派な盆栽が並べられていて、これらを眺めながら入浴出来る名物湯だ。露天風呂に入りながらの盆栽鑑賞とは、なかなか乙なものだ。すっかり気に入って長湯してしまった。今度訪れるときは、泊まりながらゆっくり過ごしたいと思って宿を後にして、さらに国道を県境に向けて走っていった。この国道も改良工事が進み、今では難所鬼首峠も、立派な鬼首トンネルが出来て、すいすいと越えて、宮城県内へと入っていった。

湯ノ岱温泉「旅館松の湯」の外観
☆湯ノ岱温泉「松の湯」に入浴する。<入浴料 500円>
湯ノ岱温泉「旅館松の湯」の内湯 湯ノ岱温泉「旅館松の湯」の露天風呂
宿


湯ノ岱温泉「旅館松の湯」のデータ
標準料金 1泊2食付9,000円~(込別)
入浴料金 500円
外来入浴時間 午前10時~午後3時
宿泊定員 木造2階建 和室10室 計20名 
住所、電話 〒019-0321 秋田県雄勝郡雄勝町秋ノ宮山居野11-59 TEL(0183)56-2221
交通 JR奥羽本線横堀駅から羽後交通バス秋の宮山荘行き約25分湯ノ岱温泉下車
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進
*泉質別適応症(浴用)
 きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病




源泉名 湯ノ岱温泉
湧出地 秋田県雄勝郡雄勝町秋ノ宮
湧出量
知覚
泉質 ナトリウム-塩化物泉
泉温分類 75℃(高温泉)
pH値
液性分類
溶存物質総量
浸透圧分類 低張性

・鬼首温泉郷へ至る

 一帯は、栗駒国定公園内の荒雄岳(標高984m)南西中腹に位置する標高300mの自然豊かな高原にあって、全国有数の湯量を誇る鬼首(おにこうべ)温泉郷だ。この温泉は応神天皇の頃にはすでに発見されていたと伝えられるが、歴史上は平泉の奥州藤原氏により、平安時代後期に開かれたのが起源とされている。その後、仙台藩主伊達家の御用湯として栄えてきた。現在では、吹上、轟(とどろき)、宮沢、神滝(みたき)の4つの温泉の総称となっていて、それぞれに温泉宿があるが、昔は、荒湯、蟹澤、赤澤などの温泉もあって湯宿があったと聞く。鬼首という地名は、801年(延暦20)、坂上田村麻呂が東征の際、"鬼"と恐れられていた大竹丸を追い詰め、首をはねた地ということから、ここを鬼切辺と呼んだことに由来する。それが後に、鬼首に変化したと言われている。周辺には、地獄現象で有名な片山地獄をはじめ天然記念物雌釜雄釜、荒湯地獄、吹上沢大湯滝、そして地熱発電所もあり、温泉現象の活発な地帯であることをうかがわせる。鬼首温泉郷は近年、江合川の左岸にあるリゾートパーク・オニコーべ・エリアが人気を集めているようで、そちらの方に関心が向きがちだが、右岸に点在する歴史ある湯治場の方がこの温泉の歴史と伝統を伝えてきたのだ。私は、まず吹上温泉にある「鬼首かんけつ泉」に行ってみることにした。 

・「鬼首かんけつ泉」を見学

 ここは入場料400円が必要で、ちょっと高いような気もするが、無料で入れる露天風呂も併設されているし、湯滝があって温泉が流れる渓谷を散策できるのも良い。園内には、「弁天」と「雲竜」と名付けられた2つの間歇泉があり、「弁天」は100℃をこえる熱湯を約15~20分毎に15m以上の高さまで噴出する日本有数のものだ。この「弁天」は地下20mの空洞に溜まった地下水が、マグマにより130℃ほどまで熱せられ、一部が水蒸気となりその圧力で残りの熱湯が地上に吹き出すと書いてあった。また、「雲竜」の方は、5分毎にまるで竜が雲を目指し昇っていくかのように6~7mの高さまで湯柱を噴き上げる。「弁天」が吹き出すまでには、少々待ち時間があったので、露天風呂を見に行った。誰も入浴していなかったが、吹上沢の渓谷に沿って、数十人は入れそうな大きなもので、源泉が掛け流しにされている。よほど、一浴していこうかとも思ったが、あまりにも見学者が多いので、今回は遠慮することにした。

 
間歇泉「弁天」 間歇泉「雲竜」

・吹上温泉「峯雲閣」に入浴する

 「鬼首かんけつ泉」を出て、少し行くと一軒宿の吹上温泉「峯雲閣(ほううんかく)」に至る。宿の周囲は、静かな森に囲まれていて、落ち着いた風情を漂わせている。玄関で呼ぶと、女将さんが出てきて、入浴料500円也を払って、浴場へと向かった。男女別になった内湯は、数人が入れる程度でそんなに大きなものではないが、湯船には無色透明なお湯が掛け流しにされていて、温度は少し熱めだ。前面がガラス張りになっていて、大露天風呂(混浴)が見える。ドアから、すぐ外へ出られるが、こちらの方は数十人は入れそうな大きな浴槽で、奥の方に洞窟のようなものも見える。後で訪ねたら、1953年(昭和28)頃まで、この温泉熱を利用して味噌を発酵させるための麹を造っていたそうで、その室の跡とのことだった。今は、ちょっとした洞窟風呂の趣で、興味をそそる場所になっている。ゴールデンウィークのこととて、老若男女結構な数の浴客がいて、銘々のスタイルで温泉を楽しんでいた。ここから、滝を望むことが出来るのだが、これが有名な吹上沢大湯滝で、滝壺で入浴できると聞いていたので、裸のままで少し歩いて行ってみた。しかし、この季節はほとんど水に近い状態で、とても温泉に浸かっているという感じではない。滝に打たれてみたいとも思ったが、修験者のような状態になりそうだったので、引き返して、また露天風呂に入り直した。じっくり温泉を堪能してから、宿を後にしたが、ほんとうに大自然の温泉資源に恵まれた良い旅館だと感心した。

吹上温泉「峯雲閣」の玄関 吹上温泉「峯雲閣」の内湯
☆吹上温泉「峯雲閣」に入浴する。<入浴料 500円>
宿


吹上温泉「峯雲閣」のデータ
標準料金 1泊2食付10,000~12,000円(込別)
浴室 内湯2(男1・女1)、露天風呂(混浴1)、この他に天然温泉の滝壺あり
入浴料金 大人500円 小人300円
外来入浴時間 午前10時~午後1時
宿泊定員 木造2階建 和室11室 計41名 
住所、電話 〒989-6941 宮城県玉造郡鳴子町鬼首吹上16 TEL(0229)86-2243
交通 JR陸羽東線鳴子温泉駅よりバス25分鬼首間欠泉前下車徒歩5分
*一般的適応症(浴用)
 
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進
*泉質別適応症(浴用)
 きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病




源泉名 吹上の湯(掘削泉・自然湧出)混合泉
湧出地 宮城県玉造郡鳴子町鬼首吹上
湧出量
知覚 無色透明、無味、殆ど臭気なし
泉質 ナトリウム-塩化物泉
泉温分類 92.2℃(高温泉)
pH値 8.8
液性分類 アルカリ性
溶存物質総量 1,086.9㎎/㎏
浸透圧分類 低張性

帰途につく

 その後は、再び国道108号線に出て、荒雄湖畔を南下し、国道47号線に合流してからは、東進した。高速道路の渋滞が気になったので、早めに帰途につくことにして、東北自動車道に乗ったものの、予想通りゴールデンウィークの大渋滞に巻き込まれてしまった。それでも、なんとかその日のうちには自宅に戻ることが出来てホッとした。今回は、東北地方の秘湯をめぐり、大自然にも触れて、良いリフレッシュにはなったかな...。

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